話を始めたら、相手に「ポカン」とされる構造

読了目安:約5分(2790文字)

会話をしていて、こちらは普通に話しているつもりなのに、相手が急に黙ったり、反応が薄くなったりするケースの話をします。

「え、今のって、何の話ですか?」
そう聞かれて初めて、自分の話が飛んでいたことに気づくこともあります。

この手の噛み合わなさは、相手の理解力や、こちらの説明力の問題というより、もっと単純なところで起きていることが多いです。

原因は、「前提」が抜けていることです。

前提が抜けると、相手の思考が止まる

自分の頭の中では、話はつながっています。

さっきまでの流れも、昨日のやり取りも、全部ひとつの線になっています。でも相手の頭の中には、その線がありません。

こちらが前提を置かずに話し始めると、相手は「どの話のフォルダを開けばいいか」が分からなくなります。

内容が難しいから止まっているのではなく、入口が見つからなくて止まっている。
だからポカンとしたり、聞き返せなかったりします。

立場が違うと、事故が増える

ここで厄介なのが、関係性によって反応が変わることです。
友達同士なら、「何の話?」とすぐ聞けます。立場が対等だと、会話は止めやすいからです。

でも、仕事の場面ではそうならないことがあります。

相手が「聞き返しづらい空気」を感じていると、分からなくても止められません。

結果として、ポカンとしたまま進んでしまい、ミスやズレにつながります。もし第三者が側で見ていたら、それはまるで「コント」を見せられている状況です。

仕事の場面では、ズレがそのまま事故になる

たとえば動画編集の仕事で、こういうケースがあったとしましょう。

料理系の動画と、別ジャンルの動画を並行で進めているとき。
クライアントから、 「このテロップ入れといてください」 とだけ連絡が来たとします。

受け取る側としては、どちらの動画の話か分かりません。
丁寧な人ほど、ここで確認を取ります。

「どちらの動画の件でしょうか?」

この確認が入った時点で、作業は一度止まります。
これが一つ目のストロークです。

そこで相手から、 「今の流れなら、料理の方に決まってるでしょ」 なんて返信が来たら。

「えー?」となりますよね。

こちらはサボっているわけでも、理解力が低いわけでもありません。
ただ、相手の頭の中にある「前提」が見えていないだけです。

本来なら最初に、 「料理動画の件なんですが、このテロップを〜」 とタグがついているだけで、この確認作業も、その後のモヤモヤも発生しませんでした。

噛み合わない会話は、性格の不一致ではなく、単に「タグがないから検索できない」という構造のエラーです。

逆のケースを考えれば、依頼する側のときは、前提(タグ)を相手につけることが大事ということです。

理屈が分かっても、直らないのが普通

ここまでの話は、読めば誰でも理解で切ると思います。
でも、理解できたからといって、すぐにできるようになるわけではありません。

なぜなら、コミュニケーションは、知識より習慣だからです。

注意力や気合いで直せるなら、世の中から噛み合わない会話は消えています。
理屈は分かるのに直らない人が多いのは、それが悪いのではなく、癖として体に染みているからです。

前提を置けない人は、訓練が必要

もし自分が、何度も同じことを言われているなら。

「話が分からない」「前提が抜けてる」と言われる回数が多いなら、それは努力不足ではなく、習慣の設計不足です。

このタイプは、注意力や根性より訓練が必要です。
しかし、自分ひとりで直そうとすると、ほぼ失敗します。なぜなら、癖は無意識で出るからです。

現実的にやるなら、環境に組み込みます。
たとえば身近な人に一言伝えておく。

「自分、前提を置かずに話し始める癖があるので、分からなかったら“どの件?”って止めてください」

これを先に渡しておくだけで、相手は止めやすくなります。

止めてもらえる回数が増えると、そこで初めて自分の癖が見えるようになります。
協力してもらうのは甘えではなく、練習の仕組みです。

もし協力してくれる人がいないなら、会話トレーニングや話し方講座に行くのも選択肢のひとつですね。

コミュニケーションはスキルなので、磨く場所に行けば伸びます。

助ける側の人へ、これは優しさの話

もう一つ、逆側の話もあります。

身近に「いい人なんだけど、いつも前提が抜ける人」がいる場合です。

その人に対して、
「また始まった」
と黙って受け止めてしまうと、ズレは直りません。

優しさとしてできるのは、会話を止めてあげることです。

「どの件の話?」
それを言ってあげるだけで、相手は修正できます。

この一言は、相手を否定するためではなく、会話を成立させるための補助です。

ただし、それで毎回ムクれたり、直す気がない態度が続くなら、そこまで背負わなくて大丈夫です。
直すかどうかは相手側の問題で、こちらが全部引き受ける話ではありません。

日常の「タグ付け」が練習になる

このズレは、仕事だけの話ではありません。
友達とのLINEでも起きます。

いきなり、

「あの時の親父さ、どういうつもりだったんだろうね」

と言われたら、「どの親父?」になります。

最初に、
「この前の旅行の時の話なんだけどさ」
と置くだけで、噛み合い方は変わります。

こういう小さな前提の置き方は、日常会話で練習しておくと、仕事にも持ち込めます

筆者の印象では、文章を書く習慣がある人は、普段から前提を置いて本題に入る癖がついていることが多い気がします。
そのため、会話でも自然に「どの件の話か」を置ける人が多い印象があります。

逆に、短文のやり取りが中心の環境だと、反射的に返す場面が増えて、前提が省略されやすくなることもあるのかもしれません。

話が噛み合わないとき、技術の問題に見えて、実は入口の問題です。

前提を長く語る必要はありません。相手が探せるタグを一つ置く。
それだけで、余計なストロークが減ります。

最近、会話が噛み合わないことが増えたと感じたら。

自分の話の入口に、前提が置けているかだけ、少し観察してみてもいいかもしれません。

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