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「相手のため」を思ったはずが、なぜか伝わらない。
最近、仕事の現場でよく耳にするようになった、2つのアルファベットの組み合わせ。
「UI」と「UX」
これらは、Webやアプリ開発の専門用語だと思われがちですが、実はあらゆるビジネス、もっと言えば「誰かに何かを届ける」すべての仕事に関わる重要な概念です。
まずは、この言葉の正体について、少しだけ整理をしておきましょう。
「UI/UX」の言葉の定義を整理
「UI(ユーアイ)」と「UX(ユーエックス)」とは
UI(User Interface:ユーザーインターフェース) 「Interface」とは「接点」や「境界面」という意味です。
つまり、ユーザー(お客様)が、商品やサービスと触れる「場所」や「見た目」そのものを指します。
- Webサイトのデザイン
- チラシのレイアウト
- 申込用紙の書き方
- 店舗の入り口の看板
これらはすべてUIです。
UX(User Experience:ユーザーエクスペリエンス) 「Experience」とは「体験」という意味です。
その接点を通じて、お客様が何を感じ、どのような経験をしたか。
「使いやすかった」
「スムーズに予約できた」
「なんとなく心地よかった」
こうした感想や満足度の総称がUXです。
定義としては以上のようになりますが、これを辞書的な意味のまま覚えておく必要はありません。
私たちの現場レベルで翻訳するならば、
「UI=お客様が目にする・触れるすべての道具」
「UX=それを使った時のお客様の感情の動き」
と捉えておけば十分と考えます。
「思いやり」を構造に置き換える
この「使いやすさ」や「体験」の話になると、どうしても「おもてなしの心」や「相手への思いやり」といった精神論で語られがちです。
もちろん、起点は「相手に喜んでほしい」という気持ちで間違いありません。
しかし、仕事として成果を出すためには、その気持ちを「構造」に変換する必要があります。
どれだけ作り手に「親切心」があっても、仕組みが不親切であれば、その思いは相手に届かないからです。
見た目の美しさではなく「ノイズの除去」
たとえば、手配したチラシのデザインがとても美しかったとします。作り手としては「きれいなものができた、喜んでもらえるはずだ」と感じるでしょう。
しかし、そこに掲載したQRコードが小さすぎて、スマホのカメラでなかなか読み取れないとしたらどうでしょうか。
あるいは、読み取った先のページがパソコン用の表示のままで、文字が米粒のように小さかったとしたら。
お客様は、その瞬間に「面倒だな」と感じ、離脱してしまいます。
これは、作り手の性格が悪いわけでも、思いやりが足りないわけでもありません。単なる「設計ミス」です。
UI(接点)における「良さ」とは、装飾の美しさではありません。
相手が目的を達成しようとする時に、迷ったり、考え込んだりする「ノイズ」を徹底的に取り除くこと。
それが、機能としての優しさです。
感動ではなく「文脈の維持」
UX(体験)についても同様です。
私たちはつい、お客様に「感動してほしい」「すごいと思ってほしい」と、プラスの感情を求めてしまいます。
けれど、日常の業務において本当に大切なのは、感動よりも「滞り(とどこおり)がないこと」です。
チラシを見て興味を持ち、QRコードを読み込み、サイトを見て、予約ボタンを押す。
この一連の流れの中で、お客様の思考が一度も中断されないこと。「あれ?」「どうすればいいの?」という疑問符が浮かばないこと。
まるで流れる水のように、自然とゴールまでたどり着ける状態を作ることこそが、優れたUXと言えます。
それは、相手の貴重な時間を預かっていることへの、静かな敬意の表れでもあります。
なぜ「自分」なら使えるのに、相手は使えないのか
ここで一つの問題が起きます。
作り手である私たちは、どこに情報があり、どう操作すればいいかという「正解」を知ってしまっている、ということです。
「これくらい見れば分かるだろう」
「ここに書いてあるのだから気づくだろう」
無意識のうちに、自分を基準にして判断してしまいます。
これが、構造的なエラーを生む最大の原因です。
これを防ぐための特効薬はありませんが、唯一できることは、自分とは全く異なる視点を持つ「他人の目」を借りることです。
あるいは、自分自身が「初めてこれを見る人」になりきって、予備知識ゼロの状態でシミュレーションを行ってみること。
「自分なら分かる」を疑うことから、本当の改善が始まります。
正解はないが、エラーは減らせる
人の感じ方は千差万別ですし、使う環境や状況も常に変化します。
ですから、万人が100点をつける完璧なUI/UXなど存在しません。
それでも、「相手の手を止めさせていないか?」「思考を中断させていないか?」という問いを持ち続けることはできます。
「思いやり」という言葉で思考停止せず、具体的な「設計」として相手への配慮を形にしていく。
その積み重ねが、結果として「信頼」と呼ばれるものに変わっていくのではないでしょうか。
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