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「いいことを言っているはずなのに、なぜか周りが動いてくれない」
そんな違和感を抱えるリーダーや発案者は少なくありません。
理屈は通っている。大義名分もある。なのに、周囲の反応は「頑張ってください」という、どこか他人事のような距離感に留まってしまう。
なぜ、正論を並べれば並べるほど、相手との間に見えない壁ができてしまうのでしょうか。
「完成品」は評価の対象にしかならない
私たちが何かを説明しようとするとき、つい「完璧な計画」や「非の打ち所がない理屈」を用意しようとします。
しかし、構造的に見れば、完成されたパッケージを差し出すことは、相手を「観客席」に座らせる行為に他なりません。
観客席に座った人は、その内容を「評価」する立場になります。
良し悪しを判断し、納得はしてくれますが、自ら舞台に上がって手を貸そうとは思いません。
理屈が完璧であればあるほど、相手が入り込む余白(隙間)は失われていくのです。
優先順位が「ハック」される仕組み
わかりやすい例が「推し活」や、現代のクラウドファンディングに見る構造です。
客観的に見れば、支援する側が一方的にリソースを投じているように見えますが、彼らは単なる「消費」をしているのではありません。その物語の一部を自分が担っているという「参画」の感覚、あるいは、その熱狂の片棒を担ぐ「共犯者」になることに、強い充足感を得ているのです。
また、2024年から2025年にかけて特定のプロダクト(LABUBUなど)が爆発的なブームを巻き起こした現象も、根底にあるのは「熱量の伝播」です。
最初は一部の熱狂的な層から始まった小さな火が、ある一定の数を超えた瞬間に「持っていないことが違和感」になるほどの社会現象へと膨れ上がる。
「この人の役に立ちたい」「この熱狂のなかにいたい」という欲求は、人間にとって極めて強い原動力です。
そのとき、優先順位は損得を超えて、その対象が「自分の物語」の一部へと昇華されます。
人は「不景気だから」動かないのではありません。たとえどんな不況下にあろうとも、心が動けば人は動きます。
人は「正しいから」動くのではなく、「自分の人生に必要だ」と直感したときに、優先順位の最上位を書き換えるのです。
それは、社会状況や数字といった外側の理由(正論)を、個人の内なる熱量が凌駕する瞬間でもあります。
「あなたは大丈夫ね」という拒絶の壁
かつて筆者も、オープン前の飲食店が自ら店内を改装し、手作りで店を仕上げていく様子をSNSで見守っていたことがありました。
その必死で、かつ楽しそうな「未完成のエネルギー」に当てられ、気づけば「ホームページを制作させてほしい」と、手弁当で名乗り出ていたのです。
もしその店が、最初から大手資本のように完璧な状態で準備されていたら、私のスキルが入り込む余地はなかったでしょう。
人は完成されすぎたものを見ると、「あなたは大丈夫ね(自分がいなくても大丈夫ね)」と無意識に心理的なシャッターを下ろしてしまいます。
未完成のアイドルを育てるファン心理と同じで、人は「欠けているもの」に対してこそ、「自分の出番だ」と身を乗り出すのです。
「あなた」というピースを指名するラブコール
結局、人が「他人事」だと感じてしまう最大の理由は、その構造の中に「自分じゃなくてもいい」という空気を感じ取ってしまうからです。
もし、あなたが誰かの力を借りたいと願うなら、語るべきは「計画の正しさ」ではなく「相手の必要性」です。
多くの人が「こんなに良いことをしているから手伝って」と、内容の正当性で説得しようとします。
しかし、本当に人の心を揺さぶるのは、「あなたのこの力がなければ、このプロジェクトは完成しない」という切実な指名です。
相手を「その他大勢の協力者」として扱うのではなく、代わりのきかない「固有のピース」として定義すること。
それが、相手の優先順位を一気に書き換える、最強のラブコールになります。
理屈は、後からついてくる
「気が狂ったように」何かに没頭している人の姿は、周囲に飛び火します。
始まりは、たった一人の偏愛かもしれません。
しかし、その熱量が「16%」の熱心な支持者に接続されたとき、物語は臨界点を超えます。
かつては「個人の狂気」に見えたものが、キャズムを越え、マジョリティ(大衆)を巻き込む「公共の正論」へと姿を変えていきます。
最初から全員を納得させる理屈は必要ありません。
むしろ、理屈で武装する前に、自分の中にある「消せない火」をそのまま差し出してみるほうが得策と考えます。
あなたのマーケティングに、誰かが入り込み、共に火を広げるための「余白」は残されているでしょうか。
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