集客ツールとしてYouTubeを使う

読了目安:約4分(2229文字)

YouTubeを集客ツールとして使いたいと考えたとき、まず知っておきたいのは、その「目的」による構造の違いです。

この記事で扱うのは、再生数を稼いで広告収益を得るための運用(いわゆるYouTuber的なモデル)ではありません。
あくまで自社のサービスや商品へつなげるための、「ビジネスの入口」としてのYouTube活用についてです。

「どう作るか」という具体的な手順を探し始め、テーマを決め、カメラを回し、編集ソフトと向き合う。

その行動力は素晴らしいものですが、一方で「一通りやってみたけれど、どこに向かっているのか分からなくなった」という声も少なくありません。

もし今、制作の途中で足が止まりそうになっているとしたら、それはセンスや努力の不足ではなく、手元にある「地図」の解像度が少し低いだけかもしれません。

動画制作という実務をスムーズに進めるためには、カメラを回す前に整理しておくべき「全体の構図」があります。

目的を「再生数」ではなく「増やしたい行動」に置く

YouTubeにおける「集客」の定義は、人によって異なります。ここで重要なのは、再生数や登録者数といった画面上の数字ではなく、現実の世界で「増やしたい行動」が何かを明確にすることです。

たとえば、以下のような目的が挙げられます。

  • 店舗への来店や、現場への来訪を増やしたい
  • 専門的な相談や、問い合わせを増やしたい
  • 商品の購入(物販)を増やしたい
  • 採用や、共に活動する仲間を集めたい
  • 認知を広げ、ファンとの接点を作りたい

同じ動画プラットフォームであっても、目的が変われば動画が担う役割が変わります。

役割が変われば、見せ方も、視聴者をどこへ誘導すべきかも変わります。
目的を定めずに制作に入ることは、地図を持たずに歩き出すようなものです。

「型」は、視聴者と作る人のための共通言語

ここでいう「型」とは、流行りの編集テンプレのことではありません。
動画が担う「役割」を固定するための枠組みです。

役割が固定されていると、視聴者は「このチャンネルを見れば何が得られるか」を予測できるようになり、安心感が生まれます。
作る側にとっても、一つの型に沿って判断すればよいため、意思決定のコストを下げることができます。

集客目的の動画が担う役割は、大きく次の4つに分解できます。

  1. 安心を作る: 心理的なハードルを下げる
  2. 判断材料を渡す: 選択に必要な情報を整理する
  3. 関係を育てる: 価値観やプロセスを共有する
  4. 体験を先に渡す: 疑似的にその場を体験してもらう

まずは、自分の目的に対してどの役割を重視すべきかを選択します。

【ケーススタディ】目的によって変わる「中心となる型」

目的と型の組み合わせを整理すると、運用方針がより具体的になります。

■ モノやサービス(物販・商材)を売りたい場合

物販やサービスの販売が目的の場合、視聴者の状態によって、機能する「型」が二つに分かれます。

すでにそのジャンルに興味があり、「失敗したくない」と考えている層には、「判断材料を渡す」型が有効です。商品のスペックや、実際の使い勝手、他との違いを丁寧に整理することで、納得感のある購入を後押しします。

一方で、まだその商品の必要性に気づいていない**「これから興味を持つ層」**には、「体験を先に渡す」や「関係を育てる」型が効きます。それを使うことで日常がどう変わるのか、あるいは作り手の背景にある想いを見せることで、機能を超えた「買う理由」が生まれます。

■ 来店・来訪を増やしたい場合

見知らぬ場所へ行くのは、誰しも少しの不安を伴います。この場合の中心は「安心を作る」型です。店内の空気感やスタッフの様子、当日の流れが伝わることが、何よりの動機付けになります。また、サービスを「先に体験してもらう」要素を含めることで、訪問後のイメージを具体化させます。

■ 相談・問い合わせを増やしたい場合

視聴者が求めているのは、過度な演出よりも「自分にとって有益か」を判断できる材料です。メリットだけでなく、向いている人と向いていない人の条件、依頼の境界線などを提示する「判断材料を渡す」型が機能します。誠実な情報の提示が、信頼の土台となります。

■ 採用・仲間集めを増やしたい場合

華やかな魅力だけでなく、現場の現実や大切にしている思想を伝える「関係を育てる」型が重要です。変化の過程や日常の営みを見せることで、期待値のズレを減らし、共感を持った層とのつながりを作ります。

「見つかる・伝わる・動ける」の三層構造

制作に入る前に、YouTubeというツールの構造も押さえておきたいです。これはテクニック以前の、インフラとしての視点です。

  • 見つかる: 適切なキーワード設計や露出の工夫
  • 伝わる: 目的と型に沿った動画内容
  • 動ける: 次の行動(リンクや案内)が用意されているか

この3つが揃って初めて、動画はビジネスの「入口」として機能します。具体的な初期設定や詳細な手順は、仕様変更に合わせて更新されるべき外部資料(PDF等)に切り出し、本体の設計図と混ぜないように管理するのが、運用を長続きさせるコツです。

その1本は、どこへ続く道か

テーマ選びやサムネイル制作、編集といった工程は、単に「上手く作るため」にあるのではありません。決めた目的と型に沿って、一貫性のある意思決定を積み上げるためのプロセスです。

いま作ろうとしている動画は、作り手のこだわりを詰め込んだ「作品」でしょうか。それとも、まだ見ぬ誰かを導くための「入口」でしょうか。

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