プロンプトの「形式」に頼る前に。

読了目安:約2分(1139文字)

「そうとしか取れない指示」という設計図

AIを活用しようとすると、必ずと言っていいほど「プロンプトの書き方」という壁に突き当たります。「#役割」や「#背景」といった記号を使い、特定の型に当てはめる。まるで魔法の呪文のように語られますが、そもそもプロンプトとは日本語で「指示」を意味する言葉に過ぎません。

形式を整えることは、本当にそれほど重要なことなのでしょうか。

AIが差し出すのは、いつだって「平均点」

筆者は、AIが出力するものは、どこまでいっても「精度の高い平均点」であると考えています。

事実、現在の生成AIは、膨大な学習データの中から「次に続く可能性が最も高い言葉」を統計的に選択してつなぎ合わせる仕組みです。つまり、構造的に「もっともらしい回答」――すなわち、中央値的な答えを導き出すように設計されています。

どれほど精緻な形式でプロンプトを組み上げたとしても、AIが突然、誰も思いつかなかったような「最高の正解」を自律的に生み出してくれるわけではありません。AIに頼り切っている限り、平均を超えるものは作れない。そう割り切ってみると、記号やタグといった形式をこねくり回す時間は、どこか本末転倒なものに思えてきます。

人間関係から学ぶ『指示の解像度』

ここで、筆者の経験を少し共有させてください。

かつて多くの部下を持つ立場にいた際、当時の経営者から徹底して叩き込まれたのは、「そうとしか取れない指示を出せ」という姿勢でした。

「部下は上司の言うことを聞くものだ」という慢心は、指示のズレを生みます。力関係ゆえに質問できず、不明瞭なまま動き出してしまうこともある。だからこそ、上司に必要なのは「解釈の余白を限りなくゼロにする」設計であり、さらに「復唱」によって理解の齟齬を確認することでした。

部下への指示出しが苦手な人ほど、AIを使うのも下手な傾向があるのかもしれません。

それは形式を知らないからではなく、相手との間に生まれる「解釈のズレ」を、情報の設計によって埋める習慣がないからです。

意味の通じない日本語を記号で飾り立てるよりも、日本語の論理として「そうとしか取れない」筋道を通す。
そのほうが、AIから引き出す「平均点」の精度は、はるかに安定します。

形式の先にあるもの

プロンプトの形式が大事かどうか。その答えは「人による」のでしょう。
相手の視点に立って情報を整理し、論理的な日本語を扱える人にとって、形式はただのオプションに過ぎません。

AIに「最高」を求めず、まずは確実な「平均点」を最短で引き出す。
そこから先、自分の足でどこへ向かうかを考える。

そのためには、記号の海に溺れるのではなく、目の前の相手(AI含む)に「どう伝わっているか」を観察し続ける姿勢こそが必要だと思うのです。

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