人が育たない(人材育成のための最初の設計図)

「あの子は育たない」と嘆く前に、リーダーができること。
「何度言っても同じミスをする」
「指示待ちで、自分から動こうとしない」
現場を預かるリーダーなら、一度はそんなふうに頭を抱えたことがあるかもしれません。
「最近の若い子は……」と、つい溜め息をつきたくなる瞬間です。
でも、少しだけ立ち止まって考えてみたいのです。
彼らが育たない原因は、本当に彼らの「やる気」や「能力」だけの問題なのでしょうか?
もしかすると、私たちが彼らを迎え入れたあの最初の扉――「入り口の設計」に、ボタンの掛け違いがあったのかもしれません。
「いい人が来ない」は本当か?
人手不足の昨今、「贅沢は言っていられない」というのが現場の本音でしょう。
「誰でもいいから来てほしい」と焦って採用したり、知り合いの紹介だからと詳しく話を聞かずに入店が決まったり。
そうした「曖昧な入り口」を通ってきた人に対して、後から「なんで育たないんだ」と嘆くのは、少し酷な話かもしれません。
入り口が曖昧だと、その人が育つかどうかは完全に「運任せ」になってしまいます。
ただ、会社を運任せにはできません。相手を変えることもできません。
しかし、迎え入れる私たちの「準備」や「約束」は、今からでも変えることができます。
会社組織とは「問題解決」の場
「組織」の定義はシンプルです。
人が2人以上集まれば、それはもう立派な組織です。
そして、人が組織に集まる理由は、一人ではできない「問題解決」をするためです。
お客様の空腹を満たすことも、困りごとを解消することも、すべては問題解決。
だからこそ、新しく仲間になる人には、「ここで一緒にどんな問題を解決してほしいか」を最初に手渡す必要があります。
単に「時給いくらで、週何日入れるか」という条件確認だけでは、この一番大切な「組織の目的」が伝わりません。
条件よりも「思考のクセ」を見る
では、どうすれば「育つ可能性」を見極められるのでしょうか。
正解はひとつではありませんが、例えば面接の場で、こんなふうに聞いてみるのはどうでしょう。
「これまでの人生で、一番のピンチはどういう時でしたか?」
「その時、あなたはどう行動しましたか?」
過去の失敗や修羅場をどう乗り越えたか。
あるいは、そこから何を学んだか。
その語り口には、その人の「問題解決へのスタンス」や「思考のクセ」が滲み出ます。
スキルは後からでも教えられますが、物事に向き合う姿勢はなかなか教えられません。
リーダーの手腕とは、相手のスペックをジャッジすることではなく、こうした対話の中から「この人なら、この場所で輝けるかもしれない」という可能性を発見することにあるのではないでしょうか。
人のせいにしない、という覚悟
従業員をコントロールすることは不可能です。
しかし、入り口の設計や、接する態度は自分でコントロールできます。
「あいつが悪い」と人のせいにしてイライラするよりも、
「最初の握り方が甘かったかな?」
「次はこういう問いかけをしてみよう」
と矢印を自分に向けてみる。
そうやって設計を変えた瞬間、不思議と相手の反応も変わり始めるものです。
人が育たない時、まずは静かに「入り口」を点検してみてください。
そこを整えるだけで、現場の景色はきっと変わるはずです。
今いる仲間を諦めないために
ここまで読んで、「入り口の話はわかった。でも、もう雇ってしまったスタッフはどうすればいいんだ?」と、もどかしさを感じた方もいるかもしれません。
明日から全員を入れ替えることなんて、現実には不可能です。
今いるメンバーで戦っていくしかありません。
だからこそ、伝えたいのです。
もし今、伸び悩んでいるスタッフがいたとしても、それを「あいつはダメだ」と個人の資質のせいにして切り捨てないで欲しいのです。
入り口でのボタンの掛け違いがあったとしても、その後の「環境」や「関わり方」を変えることで、人は驚くほど変わる可能性があります。
濁った水槽では動けなかった魚も、水が澄めば本来の泳ぎを見せてくれるかもしれません。
次回の記事では、まさにこの「今いるメンバー」が息を吹き返すための、組織の内部構造についてお話しします。
もっと構造理解を深める
教育という「点」の活動を、組織という「面」の構造に繋ぎ込みます。
属人性を排除し、誰がどのポジションに入っても機能が損なわれない「物理的な組織図」の書き方を解説します。
👉人が育たない(組織の構造設計の話)
現場の混乱や教育の停滞を、精神論ではなく「構造」で解決する。
役職経験ゼロから組織を牽引する中で辿り着いた、属人性を排したピラミッドの構築についてはこちら。
👉 リーダーシップと組織設計:属人性を排し「構造」で統治する


