部下が指示通り動いてくれない。

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部下が指示通り動いてくれない。

そんな声を、小さな会社でも耳にすることがあります。

それは激しい怒りというより、どこか諦めに近い、乾いた嘆きとして語られることが多いように感じます。

「あんなに丁寧に説明したのに」

「なぜ、当たり前のことが抜けてしまうのか」

そう考え始めると、私たちは無意識のうちに一つの二択に立たされます。

自分の指示の出し方が悪かったのか。

それとも、部下の能力が足りないのか。

自分を責めて伝え方のスキルを学ぶか、相手を諦めて管理を強めるか。

しかし、このどちらを選んでも、事態が根本から好転することはあまりありません。

問題は「指示」でも「能力」でもない

そもそもの原因は、そこにはないからです。

問題は「やり方」や「能力」の前に、もう一段深いところにあります。

そもそも二人の間に、「共有された前提」は存在しているのか。

話は、ほとんどそこに集約されます。

確認のない指示は「伝えたつもり」になる

私たちは指示を出すとき、「言葉を発した」という事実だけで、つい安心してしまいます。

けれど、確認を伴わない指示は、コミュニケーションとしてはかなり心許ない状態です。

相手がどう受け取ったのか。

どこまで理解したのか。

どんな前提を置いて解釈したのか。

それを確かめないまま終わる指示は、「伝えたつもり」になっているだけかもしれません。

「伝えた」と「伝わった」の大きな隔たり

「伝えた」と「伝わった」の間には、想像以上に大きな隔たりがあります。

確認作業とは、その隔たりを埋めるための行為です。

部下が「勝手な解釈をする」と感じる場面も、よくあります。

しかし構造を分解してみると、多くの場合、そこに悪意はありません。

悪意がないからこそ、問題は見えにくく、ややこしくなります。

部下は「空白」を自分なりに埋めている

指示の中に存在する情報の抜けや曖昧さ。

その「空白」を、部下が自分なりの経験や常識で補っているだけなのです。

どの程度の完成度を求められているのか。

他の業務と比べて、どれくらいの優先度なのか。

この作業の先に、どんなゴールがあるのか。

こうした前提は、言葉にしなければ共有されません。

「そのくらい分かれ」「察しろ」というのは、説明ではなく期待値に過ぎません。

部下は指示を聞いた瞬間、自分に見えている世界の中から、足りない情報を必死に補完します。

つまり彼らは「言うことを聞かない」のではなく、「自分が理解した前提に従って、きちんと動いている」のです。

ただ、その前提が、あなたの持っているものと少し違っていただけ。

それだけのことなのです。

確認の仕方を間違えると、話はオペレーションになる

ここで少しだけ、確認の仕方について触れておきます。

確認が大切だと聞くと、何でも復唱させればいいと考える人もいます。

メモを取らせればいい、という人もいるでしょう。

しかし、それを機械的にやり始めると、話はコミュニケーションからオペレーションの領域に入っていきます。

復唱の落とし穴

機械的な復唱は、いわば注文を繰り返すファミレスの接客のようなものです。

それ自体が悪いわけではありませんが、目的を取り違えると、相手の思考を止めてしまいます。

確認の本質は、オウム返しをさせることではありません。

「私はこう理解しましたが、ズレはありませんか?」

そうやって、相手の頭の中にある地図を一度、表に出してもらうことです。

逆に、部下が確認を求めているのに、それを面倒くさがるのであれば、問題は部下ではありません。

メモの落とし穴

メモについても同じです。

メモを取らせること自体が目的になると、「メモのためのメモ」で終わってしまいます。 作業の標準化が必要であれば、その部下自身にマニュアルを作らせるのも一つの方法です。

簡単な手順リストでも構いません。

これは単なる仕組み作りではなく、書かれた内容を突き合わせることで「見えない前提のズレ」を可視化する共同作業になります。

一緒に作る過程で、どこを理解していないのか、どこが共有できていないのかが自然と浮かび上がります。

相手を疑う前に、前提を疑う

指示が通らない。

思い通りに動いてくれない。

そんなとき、相手の能力や自分の性格を疑う前に、ひとつだけ問い直してみてください。

「今、私たちの間に、共有された前提はあるだろうか」

その問いを挟むだけで、言葉の選び方は変わります。

指示が通らないとき、まず疑うべきなのは相手ではなく、前提の共有そのもの。

そこに静かに目を向けることから、コミュニケーションの結び目は、少しずつ解け始めていくはずです。

本人のスキルや能力に目を向けるのは、その後で十分です。

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