読了目安:約3分(1497文字)
「毎日更新したほうがいい」 WebメディアやSNSの世界では、耳にタコができるほど語られる言葉です。コンサルタントがそれを推奨し、真面目な発信者ほど、その言葉を重荷に感じて疲弊していく。そんな光景が至るところで見られます。
一方で、毎日更新を続けている人の発信が、どこか「惰性」に見えてしまうことがあります。毎日決まった時間に流れてくる言葉が、風景の一部のように馴染んでしまい、個別の「色」や「温度」を感じにくくなる現象です。
これは執筆者の根気が足りないわけでも、才能が枯渇したわけでもありません。発信という行為の「設計(デザイン)」に、わずかなバグが生じているのかもしれません。
「素振り」としての更新、その効能
毎日更新を一つの「筋力トレーニング」と捉えるならば、そこには大きな価値があります。 スポーツに素振りが必要なように、書くこともまた、反復によって技術が身体化されます。語彙を選び、構成を組み、時間内にアウトプットする。このプロセスを繰り返すことで、思考を言語化する速度は飛躍的に上がります。
この場合、中身の「色」が薄くなることは、それほど大きな問題ではありません。目的は「素晴らしい作品を世に出すこと」ではなく、「いつでも書ける自分を作ること」にあるからです。
「生存信号」と「信頼のリズム」
また、別の設計思想もあります。「生存確認」としての発信です。 例えば、毎日欠かさずブログを更新する著名人が、ある日突然更新を止めたら、ファンは「何かあったのか」と心配するでしょう。フリーランスにとっても同様です。発信が継続していることは、「今日も営業している」という信号になります。
ここには「好感度」という要素も関わってきます。 毎朝同じような画像で「おはようございます」と挨拶を続ける。それ自体に目新しい情報はありませんが、「毎朝同じ時間にそこにいる」という継続性は、読み手に対して「予測可能性」という安心感を与えます。「この人は今日も変わらず活動している」というリズムの提示が、言葉の中身を超えて、誠実さや信頼として蓄積されていく設計です。
増幅装置としての「毎日」が孕むリスク
ただし、この「毎日」というリズムは、諸刃の刃でもあります。 もし発信の内容が、日々誰かへの不満やネガティブな感情に終始してしまえば、それは生存信号ではなく「ネガティブキャンペーン」として機能してしまいます。
「毎日更新」という装置は、その人の今の状態を忠実に増幅してしまいます。
何を流し、何を流さないか。そのフィルター(設計)が機能していないまま毎日を積み重ねることは、自らの信頼を少しずつ削り取っていく作業になりかねません。毎日書くこと以上に、「それをどう扱うか」という自分なりの基準が重要になります。
自分の「線路」を再設計する
大切なのは、毎日更新を「やるか、やらないか」という二元論で語ることではありません。今の自分にとって、この発信はどのような設計に基づいているのかを自覚することです。
今は、自分を鍛えるための「素振りの時期」なのか。 今は、周囲に安心感や好感度を届けるための「リズム(生存信号)の時期」なのか。 あるいは、溜め込んだ思考を「色」として解き放つ「展示会の時期」なのか。
その時々の目的に合わせて、発信のボリュームや頻度を自分で調整する。 コンサルタントの正論をそのまま受け入れるのではなく、自分の現場という設計図の上に、その言葉をどう配置するかを考えてみる。
毎日更新という線路を走り続けることも、あえて一時停止して景色を眺めることも、すべては「私として(as-I)」発信を続けるための、自覚的な選択であるはずです。
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